| 絵手紙の考え方 | 絵手紙の道具 | 線の練習 | 絵手紙の描き方 |
 絵手紙とは、絵のある手紙という意味です。絵手紙には、決まったかき方も形式もありません。自分が感じたことを、感じたままに自由にかけばよいのです。
 絵手紙の一番大切な考え方は「ヘタでいい ヘタがいい」です。絵手紙は身近にあるものを見て自由にかき、その時の気持ちを言葉にする。それだけでいいのです。絵手紙の中に出てくる「ヘタ」には、飾らず自分らしさを出すためには、上手に描こうという気持ちは捨てなければならりません。そこで絵手紙ではこの「ヘタ」という言葉を使っています。
 絵手紙には、お手本がありません。自分が描こうとしているものがお手本になります。ですから描く前に野菜や花を描く時は、じっくり観察してから描き始めます。じっくり観察してみることで、今まで自分が気がつかなかったことを発見したり、花や野菜が自分に何か語りかけてくれます。そしてはがきからはみ出すぐらいに大きくかきます。そうすることで自然と観察力や表現力が身につき、描いた絵手紙にもダイナミックさや、迫力がでてきます。
 絵手紙は下がきをしたり、一度練習してから描くということはしません。全てが一発勝負です。「手紙」というものは自分の気持ちを相手に伝えるためにあるもので、下がきをして自分らしさを失ってしまったものよりも、一枚、一筆に集中して、たとえ墨がはねてしまったり、字を間違えてしまっても最後まで描き終えることが大切です。うまく見せようという信念は捨てたほうがいいでしょう。
 絵手紙では筆と墨で描く事を勧めています。筆と墨でかいた線というのは、にじみ、かすれなどさまざまな変化を起こし、一つとして同じものはありません。自分らしさを出すためにはもってこいの道具なのです。しかし、現代では、ボールペンやシャープペンシルなどの普及により、筆と墨はほとんど使われなくなってきています。「筆と墨」というこの素晴らしい文化を次の世代へと残していくためにも、筆と墨で描く事をお勧めします。
 線が引ければ、絵も字もかけるというのが絵手紙の考え方です。線の練習こそが自分らしさを出す最も簡単な方法なのです。絵手紙では、初めての人に筆の一番上を持って穂先1、2本で1分間に10cmの線を引く練習を勧めています。これは、線をゆっくり引くということは、全神経を手の指先から筆の穂先へと集中させなければできないことで、うまくかこうという余計な考えは捨て、無になることができるのです。絵手紙を描く前に線の練習をして心が無になったところで絵手紙を描き始めれば自分らしい絵手紙が描けるようになります。
 絵に添える言葉は、短く、自分の心の感じたままをそのままかくことが大切です。決してうまい言葉をかく必要もなければ、拝啓や敬具などの手紙の面倒な形式にとらわれる必要もありません。相手のことを思ってかくだけでいいのです。手紙に添える文字は読みやすく、新聞の活字体をイメージしてかくといいでしょう。
 描いた絵手紙は必ず相手に出します。もう少しうまくなってから出そうとか、今回はうまくいかなかったから出せないということになると、手紙の意味がなくなってしまいます。失敗こそがその時の自分の気持ちが一番素直にあらわれているのです。そして絵手紙を初めて間もない頃の絵手紙こそが、後になって見ると一番自分らしさがでていることが多いのです。描き終わったら必ず切手を貼ってポストに投函する癖をつけましょう。